『もみの木という名の女』
イメクラの一室で、イメクラ嬢を待つ龍之介。やってきたのはクリスマスツリーのコスプレ(?)をしたイメクラ嬢の詩織ことシオリンだった。もみの木プレイとはいったいどういうコースなのか。まったくわからないまま、ただ時間だけが過ぎていく。イメクラのプレイルームで行われる不条理劇。

 イメクラでなにが出てきたら驚くか? というのが最初の切り口でした。得体が知れないものがいいだろうと。そして、かわいらしいものがいいだろうと。出てきた瞬間、これは絶対なにかありそうだ、と思わせる「なにか」は豊富にあるけど、その実、決定打となる事実は、なにもない。そんなものが客の前に現れる。ということで「もみの木」の格好をした女の子がやってくるのはどうだろう? となったわけです。となったわけです、と簡単に書いてはいますが、その「もみの木」に至るまでは七転八倒です。そう簡単に「あ、だったら、もみの木だ」と思いつくものではないのです。そこに一番時間がかかりました。しかし、「もみの木」というものを思いついた時点でもう勝負はついたも同然です。あとは不条理劇の作劇術にのっとって書いていけばいいのです。そこからは、驚くほど、すらすらいけました。これまで別役実さんの戯曲でさんざんワークショップなどをしたのですが、そういった経験がこういったところで役にたったりするわけです。

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